「真理子の螢」駅に降り立った鉄郎とメーテル。
ホテルの貧しい従業員フライヤを憐れみお金を恵んであげようとするが「私の何をお求めですか?」と施しを断られる。しかしフライヤから、もしよろしければ夜お金を持って私の家に来て下さいと告げられる。
鉄郎がフライヤの家を尋ねると、フライヤからアニメの演出家に将来なろうと思って書いた自信作の絵コンテを買って欲しいと告げられる。それを読み始めると部屋が停電した。
するとフライヤの体が光り始めるのだった。
そうこの星の人間は螢人間で、体の表面が光る。
全身がくまなく光る人間がもっとも美しいとされ、フライヤのようにブチ螢人間は卑しめられ貧しい暮らしを強いられている。
と長々書いてしまったが、この「ブチ」が今回のテーマ。
以前書いたブログ「男は男として生まれるわけではない。男になるのだ。:SRY遺伝子」で
オスとメスの細胞内で染色体の数を同じにするために、オスにしかないY染色体は、オスの細胞の中で鬼子扱いされている(ない方がいい)染色体である(オス化のSRY遺伝子を除いては)ということを書いた。
メスの細胞内でも鬼子扱いされている染色体がある。それがX染色体である。
おさらいすると、メスの性染色体はXX、オスの性染色体はXY。
オスにはYが余分だし、メスにはXが一本余分なのである。
Y染色体の場合は、染色体自体を矮小化して骨抜きにして遺伝子をなくしてしまうことでその難を逃れることができたが、Y染色体はそうはいかない。
なぜならば、X染色体はY染色体と違って堂々とした立派な染色体である。
ヒトの遺伝子(タンパク質のつくるための暗号)の数はおよそ22000、それが24本(常染色体22+XY)の染色体に載っている。
平均すると染色体一本当りおよそ900個。
X染色体も約1000個の遺伝子を載せている。
(それに対してY染色体には78個!)
http://ja.wikipedia.org/wiki/Y染色体
http://ja.wikipedia.org/wiki/X染色体
X染色体上に載っている遺伝子の中には、神経細胞の働きに関わるもの、免疫に関わるもの、血液凝固に関連するもの、色覚に関わるものがある(男性に血友病や赤緑色覚異常が多いのはこのせいであるが、これに関してはいずれまた)。
このようにX染色体は重要なだけにY染色体のように粗略に扱うわけにはいかず、細胞にとっては頭の痛い問題であった事だろう。
では一体、細胞はその難問をどのように解決したのか?
細胞が編み出した方法は、実に単純なものであった。
2本あるX染色体のうちの一つをいないものとして扱う。
(下記はAnother「いないもの」ネタ)
遺伝子は存在していても、その暗号が読み取られなければ(使わなければ)、存在しないのと同義になる。
言うならば、X染色体1本が包帯でぐるぐる巻きのミイラ男状態にさせられ、遺伝子の読み取りができないようになっている(あくまでもイメージです、笑)。そのしくみは専門的になりすぎるのでここでは触れない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/X染色体の不活性化
では、細胞中の2本あるうちのどちらのX染色体が眠る(不活性化する)のであろうか。
勿論、その2本は異なった遺伝子型をもった人間からもらったのだから、当然異なる。
そして、その2本のうちどちらが細胞中で不活性化するかは、ある程度発生の進んだ段階で個々の細胞でランダムに決まるようである(ランダムに決まる事の合目性はよく分かっていない)。
つまり、ある細胞では父親由来のX染色体が、別の細胞では母親由来のX染色体が不活性化する。
ということは逆に言うと、使われているX染色体は、前者なら母親由来のもの、後者なら父親由来のもの、ということになる。
その後、その細胞の子孫(つまりある一群の細胞集団のかたまり)ではその不活性化すると決まった方が必ず不活性化する。
そのため、X染色体上に乗っている遺伝子においては、メスは細胞集団としてはモザイク状態なのだ。
もし、X染色体上に皮膚の色を決める遺伝子、たとえばメラニン合成酵素の遺伝子があったとして、父親が肌黒気味の遺伝子、母親が肌白気味の遺伝子だったら、女性の肌はまるで二色の白黒牛のごとくまだら模様になっていた筈なのだ。
他の哺乳類では毛並みの色に関わる遺伝子がX染色体上に乗っているものはある。
身近な動物では猫。
三毛猫の模様をもたらす遺伝子がたまたまX染色体上に乗っているため、メスの三毛猫はランダムなまだら模様になる。
そういう遺伝子が人類の場合にX染色体上になかったのは幸いである。
もしあったら、それこそ、フライヤのような悲劇に見廻れた女性が数多く生まれただろう。
顔のぶち状態で人としての美醜が決められるような。。
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