ミトコンドリアは太古、真核生物の先祖に棲みついた細菌であった。
しかし今ではその遺伝子DNAのほとんどは核に移譲し自律的には増殖できない。
そしてせっせと呼吸を行って、エネルギー産生をして細胞に供給する従順な一器官に成り下がっている。
*ミトコンドリアは家畜化されているように見えて本当にそうか、逆にミトコンドリアが細胞を操っているのではないか、という話題は時折聞かれる(それに関してはいずれまた)。
http://www2.kpu.ac.jp/life_environ/cell_genome_bio/nkubo_jp.html
大学院生時代にミトコンドリアを研究していたため、今でもミトコンドリアには興味をもっている(今でも細々と研究を続けている)。
ミトコンドリアが細胞当りどのくらいあるかというと、ヒトの場合300〜400個程度。
人体には何と2京個(400 x 60兆細胞)。
元々、ミトコンドリはmito(糸)、chondria(粒子)という意味。元々は細胞中に見えている糸のような器官、ということでつぶつぶしているわけではない(よくあるミトコンドリアのイラストは間違っている)。
(酵母のミトコンドリア)
図では緑色にミトコンドリアが描かれているが、実際には、チトクロム類を豊富に含んでいるためどちらかと言えば「赤い糸」か。
(いのちをつなぐ赤い糸、ミトコンドリアのイメージ)
ミトコンドリは分裂と融合(フュージョン)を行うので数や形はそれにより変化する。
ミトコンドリアの分裂と融合がどのように制御されているか、その分子機構が解明されたのもここ10年くらい。出芽酵母でそのしくみの研究が進んだ(いつもの酵母自慢です、笑)。
(フュージョンは神、祝パンダ誕生)
このブログでも異種分野のフュージョンを更に強化したい(笑)
さきほど、ほとんどの遺伝子は核に移譲した、と述べたが、
ヒトのミトコンドリアのゲノムは16,569文字(塩基)しかなく、これは核ゲノム約31億文字の約20万分の1程度。
遺伝子としては、2種類のrRNA、22種類のtRNA、13種類のタンパク質の遺伝子しかもたない。
ミトコンドリアで働くタンパク質は約1500種類であることを考えると、99%以上の遺伝子は核に移譲してしまっている。
独立した細菌である枯草菌の遺伝子は約4000なので、共生する前から考えたら、0.3%しか遺伝子を保有していないことになる。
タバコではヒトの3倍の36種類のタンパク質の遺伝子がある。
ミトコンドリアはなぜ遺伝子をこんなにも手放したのか?
それと、残ったミトコンドリア遺伝子のこの微妙な数は一体何を意味するのか?
なぜ全ての遺伝子を手放さないのか、手放せないのか?
数回にわたりミトコンドリアの話しをする。
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