2012年11月2日金曜日

人がしゃべれるようになって失ったもの

複雑な音声を操れるようになってホモ・サピエンスは高度な会話能力を手に入れた。

我々の親類であるネアンデルタール人は、高度な会話はできなかったと推定されている。

ヨーロッパでは数万年間、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが共存して争っていたと考えられている。そしてネアンデルタール人は滅び、我々は生き残った。

その理由として、我々が高度な会話を通じて高度な連携をもった文化を作り上げたことが彼我の差を生じたのではないかと考えられている。


この複雑な発声は音を共鳴させるための長い咽頭腔を発達させたために可能になった。

(女子の長話も長い咽頭腔のおかげ)


しかし、その発声器官が人間に思わぬ厄介な問題を引き起こしている。

気道と食道が共有されたために、気道に食べたものを詰まらせる危険性が増した。

(『進化から見た病気』より)


複雑な発音ができないチンパンジーは咽頭腔が短い。

実はヒトの乳児も咽頭腔が短い。

しかし、そのために母乳を飲んでいる間も息ができるしむせ返ることはない。

しかし、生後6ヶ月を過ぎて喃語を喋るようになる頃から咽頭腔が長くなり、お乳でむせるようになる。

それを少しずつ学習して喉を詰まらせないようになる。

みんな意識してはいないが反射的に物を呑み込む時には、喉頭蓋、口蓋垂(のどちんこ)が素早く気道を塞ぐ。

老人が物を喉に詰まらせてしまいやすいのはその反射が遅れがちになるから。

高度な会話を得るために、喉を詰まらせるようになるなんて‥‥‥


鳥は天高く羽搏く羽を得るために、クジラは大海を泳ぎ回る鰭を得るために、手を失った。

何かを得るために、何かを失う。

こういう関係をトレードオフという。

結婚も同じ(笑)



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