それを解く鍵は、寄生種の戦略、進化の一般則である。
「あわれ、ピーターラビットは」(2012年7月6日)で触れたように、最初、宿主細胞に感染する寄生体は宿主を殺すような強毒性を発揮することが多い。
外交交渉で最初は高飛車に出るようなものか。
最初からへりくだっていたら交渉は成立しない。
しかし、それでは感染宿主の減少を招き、いずれは自らも滅ぶ。
そのため、寄生種にとっては弱毒化し、さらに片利共生、共利共生と、共存共栄の道を選ぶことが最善の策である。
賢かったミトコンドリアの祖先は、そのようにして宿主を殺して別の宿主を捜すという荒っぽく危険なことをせずとも、宿主細胞を殺さずに増え続ける道を選んだのであろう。
しかしそれでも、ミトコンドリアが宿主のアポトーシスを手助けすることの理由にはまだなっていない。
アポトーシスではミトコンドリア自身も死ぬが、一旦、共生の道を選んだミトコンドリアにとっては、実はアポトーシスそのものが自分自身にもメリットをもたらすことになったのだ。
というのも、アポトーシスはそれを実行する宿主細胞が自分にメリットがあるからこそ、行うものである。
つまり、一蓮托生の同居人であるミトコンドリアにとってもアポトーシスは100%メリットのある行為ということである。
見方を変えよう。
ミトコンドリア(ミトコンドリアDNA)にとっては、宿主細胞はすでに自分の乗り物でもある。自らのコピーを残す最善策として、場合に応じては宿主細胞をコントロールして自らも死ぬことが重要であったのだ。
つまり、視点を変えれば、ミトコンドリアDNAが細胞という新たな乗り物を獲得したことでアポトーシスを進化させた。われわれはその恩恵に浴している、とも言える。
事実、電子伝達系に支障が出たりすると、ミトコンドリア様はお怒りになって活性酸素を発生させる。するとアポトーシスが引き起こされる。
正に荒ぶる神である。
(荒ぶる神、ハルヒ)
ミトコンドリアのもたらしたアポトーシスのおかげで、我々はがんにもなりにくく、指の間に水掻きが残りカラオケでマイクが握りにくいことも(いや、ここは授業でチョークが持ちにくいことも、と訂正しておこう)、ドジっ子が自分の尻尾を踏んで転ぶ場面もない(ドジっ子も神!)。
(Steins:Gateより、頭をぶつけたクリスに)
岡部「ドジっ子アピールはよせ」、クリス「しとらんわ!」
余談だが、水泳用のアクアグローブなるものがある。
アクア説が真実ならば、もう少しヒトの指に蹼が発達してもよかったのではと思うのだが、いかに?
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