フェロモンというといかにも怪しげな淫靡な感じが付き纏うが、それというのも日常生活で使われる場合には、「フェロモン女優」を始め、性フェロモン的な使われ方がよくされるから。
生物学的に言えば、フェロモンは揮発性の化学物質であり、同種個体同士のコミュニケーションを司るものを指す。ホルモンが個体内部の細胞間の伝達を司る化学物質に対して、他個体間の伝達を司るものがフェロモンである。
人間は他の動物と違ってフェロモンをあまり感じられない。
ヒトにはフェロモンの受容体が他の哺乳類よりも少ないのが原因である。
しかし、人間が言葉によって高度なコミュニケーションを取れるようになったことが遠因であろう。言葉によって自分の意思・感情を伝え合えるようになったことで、フェロモンへの依存がより減少したであろうことは想像に難くない。
ヒトは野生生物として有していなければならない様々な知覚を失ったことであろう、その文明化の中で。例えば、地震が起こる前に鯰が騒ぐとしたら、何か電気信号ないし微弱な予兆を野生動物は把握できるのであろう。沈没する船からネズミが逃げ出す、というのも単なる比喩や言い伝えの類いとして片付けられはしまい。
その少ない人類が感じられることが判明しているフェロモンの一つが、アンドロステノールである。
以前にも書いたが、フェロモンには匂いはない。
http://ushitaka7.blogspot.jp/2013/04/blog-post_4.html
匂いを感じない程度の微量であるが、脳がそれを感知してアクションを起こす。それがフェロン。つまり、加齢臭(ノネナール)などの臭う物質はフェロモンではない。
アンドロステノールも匂いを感じられるものではない。
アンドロステノールは、男性の汗腺で作られる無臭の分子で男子フェロンと言える。
実験では、アンドロステノールを吹き付けた写真を女性に見せると、そうでない写真より、女性は魅力的に感じたという。
また別の実験では、アンドロステノールを噴霧された女性は、その後男性と一緒に過ごしたいと思うようになることがわかった。
つまり、アンドロステノールは女性を魅惑する、まさしく男性フェロモンと言ってよかろう。
注意したいのは、これが決定的な力を持つということではない。そのような傾向を持つということ。
考えてみれば当たり前だが、もし異性を自由に好きにコントロールできるなら、その他の表現型による性淘汰は全く起こらないであろう。
性フェロモンは単にその個体の異性に対する想いを微力ながら助けるだけなのである。
ここは無難に峰不二子
0 件のコメント:
コメントを投稿