今日の授業でも話したが、
ヒトはこれまで交配選抜育種法で数多くの動物を家畜化し、植物を栽培品種化してきた。
植物の場合、効率的に遺伝的多様性を新たに生じさせるために放射線を当てて遺伝子の変異を促すことも行われたりするが、個人の好事家が趣味で犬や薔薇の品種改良をする場合そんなことはしない。
しなくても新しい品種を誕生させることができる。
それは多分に「エピジェネティック」な現象に起因すると考えられてきている。
遺伝学的を意味する「ジェネティック」の上を行くもの「Epi」を接頭語につけたエピジェネティックな現象とは、DNA配列だけでは語れない現象を意味する。
遺伝子はDNA上に暗号化されている。
それはいい。
しかし、その遺伝子が読み取られる(転写されてmRNAがつくられる)なければ、その遺伝子はないに等しい。
実は、遺伝子をいないものにしてしまう現象がある。
以前、X染色体で述べた現象であるが、その場合には、一本丸々女性の細胞ではX染色体がいないもの扱いされている。
一方、そんな大規模ではないが、常染色体にあっても、染色体のところどころがいないもの扱い、つまり遺伝子が読み取られない状態に不活性化している。
その現象の原因の一つが、DNAのシトシン(C)のメチル化がある(CGという配列のCがメチル化される)。このDNAのメチル化修飾により、その部位の遺伝子の読み取りが抑制される。
http://ja.wikipedia.org/wiki/DNAメチル化
DNAのどの部位のシトシンがメチルされているかによって、同じDNA配列をもつものであってもその形質が異なることになる。
精子と卵子にそのDNAメチル化パターンが伝わるが、受精後それが一旦チャラになり、また発生過程で再構築されると現在は考えられている。その時のDNAメチル化はすべてのCG配列に起こるわけではなく、どのようにどこがメチル化されるのかがどのように決められるのかまだよく分かっていない。
しかしこれならば、DNA配列が同じ犬から短期間に別の品種ができることの説明がつく。
それが犬が短期間で多品種を産み出した原動力ではないか、ということ。
そして、一卵性双子がどうして微妙に違うのかを説明しうる。
蛯原友里さんと妹の英里さん
しかし、このDNAのメチル化パターンはある程度、親から子へ伝わるのでないか。
DNAメチル化の違いで品種の違いができるという大前提で話しをすれば、
もし全てDNAのメチル化パターンがチャラになれば、ちわわからグレートデンが産まれる可能性だってあるが、ちわわの子は相変わらずちわわである。
このエピジェネティックが現象こそが「氏より育ち」(遺伝子より環境)ということではないかと考える向きもある(環境がDNAメチル化に影響を及ぼすならば)。
このDNAメチル化現象は解析が進んでいないため確定的なことが言いづらいが、今後も遺伝子を超えた面白い現象がたくさん見つかる可能性を秘めている。
鉄(くろがね)のラインバレルより遠藤シズナ、イズナ(男と女なので一卵性双生児にあらず、残念)
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