この「寛大なお返し戦略」は寛大であるが故に、もっと親切でもっと無知な「常に協力戦略」が集団の中で広がるのを赦してしまう。
しかし、この「常に協力戦略」も集団内にもし「常に裏切り戦略」がいればそれには侵略されてしまう。
そのため、
「寛大なお返し戦略」>「常に裏切り戦略」
「常に裏切り戦略」>「常に協力戦略」
「常に協力戦略」>「寛大なお返し戦略」
という三つ巴の状態になってしまい、この三者は安定して一番強い戦略とはどれもなり得ないことが分かった。
さらに「寛大なお返し戦略」よりも強い「まぬけ戦略」が現れた。
この戦略は、勝ったらその出し方を続けて、負けたら戦法を変える、というもの。
つまり、ルーレットで赤に張って勝てばそのまま次も赤に張り、負ければ次は黒に張る。
つまり、うまくいっている限り同じことを繰返す、というところから「まぬけ」。
これでいくと、協力関係を築ける相手にはそのまま協力し続け、相手が裏切るとこちらも裏切る。
それだけでなく、相手が常に協力する「常に協力戦略」に対しても裏切り続けるので高得点を叩きだすことができる(「寛大なお返し戦略」が「常に協力戦略」とは協力するのとは異なり)。
つまり、この戦略は善人ばかりいるようなユートピアにさせない現実的な戦略である。
しかし、やっぱり、この「まぬけ戦略」にも弱点があり、「常に裏切り戦略」には勝てない。
なので、もし「寛大なお返し戦略」が「常に裏切り戦略」をこの世から一掃してくれれば、「まぬけ戦略」が一番つよくなる。
しかし実社会に即して、コンピューターが、一度対戦した相手の出方を学習していて、それによりある確率で自分の戦略をかえることができれば、「まぬけ戦略」はもっとも有効な戦略、つまり、進化的に安定的な戦略であることが判明した。
その後、さらにそれを上回る「意志堅固だが公平戦略」が考え出された。
それは協力者とは協力し合い、誘惑に負けて裏切ったりするものをこれ以上裏切らないようにしむけた後、また協力し合うようになる。さらに、「まぬけ戦略」と違って、前回の対戦でだまされても協力を続ける。つまり、「まぬけ戦略」よりも少しばかり人が良い。
では本当に、動物や人間はこの一番優れた「意志堅固だが公平戦略」のように振舞っているのであろうか?
それを次回、トゲウオを例に見てゆこう。
騙されることが心地よいこともないこともないが
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