2016年6月5日日曜日

内的死亡率は二義的なもの?

(前回の続き)
ここで更に考えを進めてみたい。
外的要因が生物の最長寿命を決めているのは理解できた。
しかし、内的要因はどこまで重要なのだろうか?

コウモリとネズミが同じ体の大きさならば、体重当たりの呼吸量も同じになり、ミトコンドリアから発生する活性酸素の量も同じになると考えられる。それなのに、ネズミは活性酸素にやられて、コウモリはやられないとすると、その差はどこから生じるのであろうか?

活性酸素がミトコンドリアより発生するや否や、それは通常、酵素もしくは非酵素的に消去される。例えば、O2- (スーパーオキシドアニオンラジカル)はスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)によってH2O2(過酸化水素)に代謝される。H2O2は次にパーオキシデースやカタラーゼによってH2Oに還元される。

これらの活性酸素消去系酵素の活性が高ければ、当然、活性酸素による細胞のダメージも少なくなる。

ヒトはサル仲間に比べて、SOD活性は極めて高い。
ヒトはこの高いSOD活性によって細胞は手厚く守られている。


コウモリのSOD活性のデータは知らないが、恐らくはネズミより高いに違いない。

百年住宅というものがあるが、これは100年持つことを前提に作られた家である。
それに比べて、最近の電化製品は壊れやすい。数年での買替えを前提に作られているから、一つ一つの部品を高価なものにしていない。

まず何年持たせたいかという耐久年数のビジョンがあって、その生物個体の細胞も臓器もデザインされていると言ってよい。

2年もてばよいネズミの細胞に大量のSODは必要ないのだ。

では、いかにもな、昨日示したような体の大きい哺乳類ほど寿命が長い、というのはどう説明するのか?という問題。昨日は活性酸素発生量の多寡で説明した。
しかし、これも外的死亡率(大きい動物ほど捕食者に狙われにくくなる)が先にきている可能性が考えられる。

がんに関しても、ヒトと同様に長生きするクジラはがんになりにくい。

ヒトは一体何年持つように設計されているのであろうか?

その設計が200年なら、もっと細胞のSOD活性を高めればよいだけの話だ。
内的死亡率は二義的なもの、ということになる。

捕食者を退け、病気を克服し外的死亡率を限りなく下げてきた人類にとって、その耐久設計が200年になろうが驚きではない。

繰り返しになるが、外的死亡率が下がり長い生が保証されゆっくりと子供を産むようになれば老化が遅くなるように生物はできている。

何千年も生きる植物のように、人類もそうなれる可能性はある。

絶対王者になれば、不老不死も夢じゃない笑

*今後は不定期に、のんびり、ブログをアップします。100年計画で(笑)

2016年6月4日土曜日

コウモリはなぜ長生きか?

久しぶりのアップ。
休載空けの漫画家さんのようでなにか面映い。

先日の授業で体の小さな哺乳類ほど短命である、という話をした。
恒温動物である哺乳類は体温を保つ必要がある。
小さい動物ほど、体積当たりの表面積が大きいため、体積(体重)当たりのエネルギーが必要なため、呼吸量を多くなる。その結果、活性酸素がより発生することによりになり、細胞が老化しやすくなる、という説明をした。

しかし、それでは説明のつかない例、つまり例外として、ヒトに加えてコウモリを挙げた。ハムスターは2年弱しか生きないのに対して、同じくらいの体重のコウモリは10年以上の最長寿命を持つ。




コウモリはなぜネズミほどの小型であるにも関わらず長命なのか?
(ヒトでは、おばあちゃん仮説、を紹介した)

今回は『なぜ老いるのか、なぜ死ぬのか、進化論でわかる』インターシフト社刊、ジョナサン・シルバータウン著(寺町朋子訳)から



生物は一生に残せる子孫の数を最大にしようと進化してきた。
換言すれば、そのような生物個体が成功し勝ち抜いて現在の生物になった。

ここで重要なのが、「外部要因による成体死亡率(外的死亡率)」という概念。
単位時間内(例えば一年間)に外的要因(例えば、捕食者に襲われて命を落とす、とか)により命を落とす確率。

外的死亡率が高い環境に棲む生物は、のんびり子供を1年間に1匹ずつ産んではいられない。さっさと、短期間にたくさんの子供を残さねばならない。
いつ兵隊に取られて戦争で死ぬかもしれない境遇では、早めに結婚した方がいい。

逆に外的死亡率が低い生物はそんなに慌てて無理して子供を短期間に産まずとも、毎年少しずつ無理ない範囲で産んでゆけばよい。

こうもりは、哺乳類で唯一空を飛べるため、捕食者に狙われる命を落とす危険性が少ない。それゆえ、ネズミに比べて外的死亡率が低い。

つまり、こうもりはネズミと違って「生き急ぐ」必要がないのである。

鳥も哺乳類と同様に恒温動物であるが、小型の鳥も同様な理由で同じくらいの大きさの哺乳類よりは最長寿命が長い。

インコの仲間のヨウム(洋鵡)の最長寿命は50年という。




これは環境的要因が生物の最長寿命(老化するスピード)を左右する例と言ってよい。

つまり、最長何年生きるように設計されているか、という最長寿命は活性酸素、テロメアなどの内的要因だけで決まるものでなく、外的要因によっても大いに影響を受けるという、極めて当たり前の帰結。

樹上生物の動物も比較的、外的死亡率が低い。
ヒトは樹上生活を捨てたが、頭脳と武器により他の生物を寄せ付けない不動の地位を築いたため、外的死亡率は極めて低くなった。

人類が長寿に堪えられる設計のボディーになれたのは、外的死亡率の低さが一因と言ってよいだろう。

オッポサムでも、外敵のいない島に暮らすものは、大陸に棲むものよりも老化速度が遅く、寿命が長い。

島国の日本人が長生きも同じ理由?(笑)

言わずと知れた長寿番組