2014年2月28日金曜日

3本だとまずい

昨日のつづき

染色体をちゃんと分離して観察する手法が確立でき、それによりヒトの染色体数がちゃんと確定した。

すると、ある病気をもつ人は異常な染色体数をもつことが分かってきた。

それがダウン症候群。

第21番染色体が1本余分にある、つまり3本ある病気(トリソミーという)。



常染色体(性染色体ではないもの)は大きい方から1から22まで番号がつけられているから、第21番染色体と言えば小さい方から2番目の染色体。

つまりあまり遺伝子を持っていない染色体。

ダウン症より深刻な染色体数異常による病気としては

第13染色体 エドワーズ症候群
第18染色体 パトー症候群

が知られているが、どちらも生後間もなく死んでしまう。

そのくらい、染色体数が増えてしまうことは細胞にとっては致命的なのだ。

その他の染色体の異常をもった赤ちゃんはいないのか?

例えば、第1番染色体が3本ある人の病気とか。

いない。

なぜならば、産まれる前に流れてしまうからだ(生まれることすらできないくらい致命的)。

大きい染色体にはたくさんの遺伝子が存在するために、より遺伝子数のアンバランスが際立ってしまうからだ、と考えられる。

逆に染色体が1本少ない「モノソミー」の病気はどの常染色体でも確認されていない。

少ないのはより致命的で流産になってしまう。

2本あるものが1になるのと、3になるのでは、1になる方が2よりも比率的に大きくずれるから。

他の染色体の数とのバランス、つまりそれぞれの染色体からつくられる遺伝子産物の量のバランスが重要なので、それが崩れると細胞の機能が保てない。

流産の多くはこのような染色体異常が原因と考えられている。

週にアニメの3本くらいなら全然問題ないのに…

2014年2月27日木曜日

昔、人の染色体は48本だった?

モーガン達がショウジョウバエで染色体の研究を進めていた横で、ヒトの染色体の研究はあまり進んでいなかった。

それでも今から100年ほど前の1912年、オーストリア人のハンス・フォン・ヴィニウォーターがヒトの組織を観察して、男性には47本、女性には48本、染色体を発見したことを報告した。

ハンス・フォン・ヴィニウォーター

もちろん、男女とも46本、が正解。

どうして、彼が数え間違えたのかは謎のままである。

どんなゴミを見誤ったのか?

ショウジョウバエ8本に対して、ヒト46本!

ショウジョウバエに比べて、数が多い分、数えミスが起きやすかった。

実はヒトの染色体数がちゃんと数えられるようになったのは、染色体をバラバラに散らす処理方法をT. C. スーが1940年代に確立できたことによる。

ヒト染色体
46本あるか、数えてみよう(笑)



シダの約1200、って数えるの放棄したな、こりゃ(笑)

その後、40年近く、この数(男性47本、女性48本)が信じ続けられていたというから驚き!

1956年に、植物細胞学者のスウェーデンのアルバート・レヴァンが、実は46本であると報告するまでずっと。

植物細胞学者だからこそ、既成概念にとらわれずに間違いを指摘できたのだ!

既成概念にとらわれず見れば楽しいアニメ
さよなら絶望先生

2014年2月26日水曜日

昆虫の性の決定法

昆虫の

オスはXY
メスはXX

この時、

(1)Xが2つあるとメスになるのか
(2)Yをもつとオスになるのか

ふたつの可能性が考えられる。

ちなみに哺乳類の場合には後者。

モーガンたちはこれを調べるに当たり、染色体異常のハエに着目した。

ヒトの場合にも、女性の減数分裂時の染色体分配の失敗で異常な染色体数をもつ卵子ができる。

特に高齢出産(35才以上)の女性にそれは多発して、ダウン症のような染色体異常の子供が産まれる原因となっている。

脱線するが、女性がまだ母親のおなかにいる胎児の段階で減数第一分裂途中まで進んで停止する。

その後、思春期になって分裂がそこから再開する。

どんなメリットがあってそんな中途半端な状態で停止しているのか、不勉強ななため知らないが、卵子が古くなる理由はそんな中途半端な状態で減数分裂を停止しているのも一因だと考えられる。

ハエの場合にも、卵子をつくる過程で減数分裂時の染色体分離に失敗があり2本のX染色体をもつ卵子ができてしまうと、それとY染色体をもつ精子が受精するとXXYの個体が産まれる。

その「XXY」のハエは「メス」になった。

その逆で、X染色体を全く持たない卵子とX染色体をもつ精子が受精するとX染色体を1つしか持たない個体が産まれる。

その「X」のハエは「オス」となった。

つまり、Xが1つあるとオスに、2つあるとメスになるというルールが見つかった。

つまり、哺乳類とは異なるルールを採用していた。
(哺乳類ではYをもつとオス、持たないとメス。ちなみに哺乳類の方が後からそのしくみが分かったが)

このようにモーガン達は、XとYという異なる染色体が性を決定するしくみを初めて明らかにして、それらに「性染色体」と命名した。

染色体だけが性別を決めるのではない
シュタゲ、ルカ子

2014年2月25日火曜日

Y染色体の"Y"とは

X染色体は立派なXの形をしているからX染色体と名付けられて、Y染色体はYの形をしているからY染色体と名付けられたと記憶していた。

左がY染色体、右がX染色体

確かに言われてみると、そうみえなくもないけど…

しかしそれは正しい情報ではない。

昨日も言ったように、X染色体は減数分裂時に対合する相手をもたないミステリアスな染色体という意味で「X」と命名された。

オスのバッタでX染色体が見つかったので、モーガンたちはショウジョウバエでもX染色体があるのかを探した。

確かに、オスのショウジョウバエでもX染色体は存在し、他の染色体と対合しないようだった。メスにはX染色体が2つあり、それらは対合するのに。

何か見落としているのではないかと、詳細に組織標本を調べた結果、見逃していた小さな染色体をオスが持っていることが分かった。

その染色体に着目して減数分裂を観察すると、X染色体は短い時間ではなるがその小さな染色体と対合することがわかった。

大きい方をXと呼んでていたために、その小さな染色体はYと呼ばれることになった。

つまり昆虫のオスはXYを、メスはXXの染色体をもつことが分かった。

これらの染色体がハエの性を決定しているのではないかと、当然モーガンたちは疑った。
(つづく)

でかい火々里さん(X染色体)と小さい多華宮くん(Y染色体)
ウィッチクラフトワークス

2014年2月24日月曜日

X染色体の"X"とは?(2)

我々の体の大半の細胞は「体細胞」と呼ばれる細胞からできている。

これらの細胞は次世代に遺伝子を残さない。

そのため、我々の肺とかに遺伝子変異が生じて癌ができても、その変異遺伝子は自分の体一大限りで終わる。

がん細胞が子孫に伝わることはない。

一方、子孫を残す細胞は「生殖細胞」と呼ばれている。

生殖細胞は男性なら精子、女性なら卵子。


減数分裂は、その配偶子(精子や卵子)をつくる際に、起こる特殊な細胞分裂であり、その過程で細胞中の染色体数が半分になる。

自分の遺伝子は息子や娘には半分しか伝えられない。

男性が半分提供して、女性が半分提供して、また1人分の遺伝子になる。

その減数分裂時に形の同じ相同染色体どうしの対合が起こる。

モーガンと同時代、別の研究者がより大きくてみやすい染色体を有するバッタのオスの減数分裂を観察していた。

その中の大きな1つの染色体だけ対合をしなかった。

なぜならば、対合すべき相同染色体が存在しなかったからだ。

そのため、対になる染色体をもつものと違って、通し番号も与えられず、ミステリアスな存在なものという意味で「X」と命名された。

その後、遅れてY染色体が発見されることになる。
(つづく)

ミステリアスな侑子さん
xxxHOLiC
祝、再開

2014年2月23日日曜日

こわい漢字(126)勉

日本人はとにかく勤勉な国民だ。

「勤勉」の「勤」も「勉」も「つとめる」という意味。

どちらにも「力」が入っている。

繰り返しになるが、「力」は鋤、農耕を表す漢字。

農耕、特に稲作はとにかく手がかかる。

「勉」は「免」と「力」からなる。


「免」は出産の分娩を意味する漢字。

分娩時の姿勢が伏して農作業している姿に似ていることから、農耕に勤しむ意味になった。



と本では紹介しているが、昔の分娩も仰向けに寝ていた筈で(うつ伏せで出産することは考えられない)、この説明はイマイチ信用できない。

勉強に疲れて、つい居眠りして机に突っ伏している姿がまさしく「勉」か(笑)

現役東大生100人に聞いた! 勉強に役立つアニメ&ゲーム&漫画はこれだ!

というサイトがあった。


シュタインズゲートで相対性理論が理解できるとは思えないのだが…

勉強に役立てようなどという不純な目的でアニメをみてはいけないww


2014年2月22日土曜日

こわい漢字(125)務め

「務」も「力」が使われている。

「務」から「力」を抜いた漢字、「ボウ」(漢字が見つからず表示できず)は、「矛」と「攵」(ボク)からなる。

「攵」の原型は「攴」で「ト」は木の枝、「又」は右手。

つまり、「攴、攵」は棒を持って人を打つ姿。

つまり、「務」は、「力」農耕に従事している人を「矛」と棒で使役する意味。



その後、すべてのことに「つとめる、はげむ」の意味になった。

やっぱり、「務」にはいい意味はなかった(笑)

作務衣
サンカレア

2014年2月21日金曜日

X染色体の"X"とは?

女性はX染色体を2つもっているのに対して、男性はX染色体を1つ、Y染色体を1つもっている。

この「X染色体」、「Y染色体」はどのように命名されたのであろうか?

20世紀当初にアメリカのコロンビア大学で活躍した遺伝学者のトーマス・ハント・モーガンはショウジョウバエを用いて染色体と形質の関係について精力的に研究を行った。

モーガン

モーガンは様々なハエの変異体を単離して解析した

それまでの研究で、染色体がメンデルの予想した「遺伝子」なのではないかと漠然と思われていた。

しかし、生物の染色体数は千差万別である。

ショウジョウバエだと4本しかない。

4つしかない染色体では、到底、たくさんの遺伝子をカバーできない。

つまり、1つの染色体は複数の遺伝子を持つことが想定された。

その中で、モーガンらは次のことに気づいた。

(1)ある2つの形質がペアを組んで伝わる。

これから、その形質を暗号化している遺伝子が同一の染色体上にあるのではないかと推論した。

(2)時折、その2つの形質がばらけて遺伝する。

上記の(1)を認めるのならば、このことは染色体というものが不変的なものではないことを示唆する。

では染色体は時々千切れるのか?

実際に千切れる。

それが、減数分裂時に相同染色体間での組換えだ。

(3)2つの形質のばらけ具合の頻度がペア間で常に決まっていること。

その形質を暗号化している遺伝子間が離れているほど、ばらけやすくなる。

そこから遺伝子間の距離、という概念がもたらされた。

遺伝子間の距離の単位は「モーガン」と命名された。

さらに、それは染色体上に遺伝子が一次元的に並んでいることを暗示する。

その後、染色体がDNAの長い紐の集合体であることが分かり、実際に長いDNA上に遺伝子が一次元的に並んでいることが分かった。

モーガンたちが偉大であったのは、ちっぽけなハエの形質から遺伝子の本質に迫る推理を展開したことであった。

そして生殖細胞で観察される減数分裂時に相同染色体が対合することにも彼らは気づいた。

その過程でX染色体は見つけられた。
(つづく)

腕もときどき千切れます
エヴァ、ぜるえるさん、強し

2014年2月20日木曜日

サイクス一族のルーツを辿る(2)

サイクスの半分は男系祖先を共有していた。

しかし、もう半分のグループは互いに関連はなかった。

考えられる理由は、

(1)家族全員が姓を変えた場合

実際にスコットランドでは、移住した土地の名前に変える等あった。

(2)父親が本当の父親じゃない場合

遺伝学者が使う「非父系」は、出生記録に記載された父親が生物学的な父親ではない場合に使う言葉である。

父親が本当の父親じゃない理由は3つの場合に大別される。

(2−1)養子をとった場合

(2−2)妻が不倫の子を残した場合

(2−3)妻が他の男性にレイプされて子を残した場合

半分のサイクス氏が「非父系」であるという事実から、13世紀以降に生じた「非父系」の発生割合を割り出したところ、1世代につき1. 3%ずつ「非父系」が生じたと出た。

つまり、どんなに多く見積もっても1%くらいしかサイクス夫人は不倫をしていなかった。

現在のイギリスで行われた調査では「非父系」息子の割合(女性が不倫の子を出産した割合)は5〜30%という推定値が出されている。

サイクス一族の「非父系」息子の割合はこれに比べればずっと少ない。

もちろん、13世紀以降からこの方800年間、5〜30%で不倫が行われたかどうかは分からない。

昔の方が女性の不倫は高かったも知れないし、その逆かもしれない。

サイクス姓とY染色体DNAの関係からこんなことまで示唆された。

歴代アニメの視聴率最高
オバQ

2014年2月19日水曜日

サイクス一族のルーツを辿る(1)

誰しも自分のルーツに関してはとても興味をもつ。

自分もとても珍しい苗字をもって産まれたため、自分の先祖はどのような人物だったのか小さい時から興味はあった。

著者のサイクスは男性なので、これまで扱っていたミトコンドリアDNAでは女性のルーツしか分からない。

男系のルーツを辿れるY染色体の研究に手を染めたことにより、当事者意識満々で研究を進められたろう。

サイクスの要望を受けて、イギリスから60人のサイクス氏が細胞サンプルを送ってくれた(口の中の粘膜細胞を綿棒で擦りとって送るだけなのでそんなに大変な作業ではない)。

サイクスは「サイク」(ヨークシャー語の小川)からの派生語とされる。

余談だが、かのバッハ(Bach)もドイツ語で小川。

世界に広がる小川さんの輪!(笑)

小川さん

イングランドでは貴族以外の大衆が姓を持つようになったのは13世紀。
(日本の場合は大衆は明治以降だからだいぶ最近)

少なくともそこまでは先祖が遡れるのではないのかとは期待できる。

Y染色体のDNAを解析した結果、サイクス氏は2つに区分された。

半分は著者のサイクス自身と全く同じDNA配列をもつ、大きなサイクス集団を形成していた。

つまり、ある1人のサイクス氏の子孫であることが示唆された。

しかし、残りの半分はそのDNAの配列とはそれとは異なる全く別のDNA指紋を持っていた。

それも各々バラバラだった。

これは何を意味をしているのか?
(明日につづく)

あやうし、ドラえもん!

2014年2月18日火曜日

アダムの呪い

今日からしばらくは、サイクスの次著『アダムの呪い』から紹介する。


それまでミトコンドリアDNAから人類の母系を辿る研究をしていたサイクスは、ふとしたきっかけでY染色体の研究にはまり込むことになる。

どんなきっかけかというと、

イギリスのオックスフォード大学で研究を続けているサイクスはある製薬会社の講演に招待された。

その製薬会社のトップが同じサイクス氏だった。

そこで、突如、彼の探究心がメラメラと燃えあがった。

そのサイクス氏は自分とつながっているのだろうか?

サイクス氏から提供をうけたY染色体を分析したところ、見事に一致した。

両者は同じ父系の子孫だった。

これに興奮したサイクスは、大規模調査を行うために、同じサイクス姓を名乗るイギリス人を名簿からピックアップして、DNAを送ってくれるよう手紙を送った。
(明日に続く)

白蛇の呪い
化物語、なでこ

2014年2月17日月曜日

イヴの33人の娘

長いこと、ブライアン・サイクス著『イヴの七人の娘たち』を紹介してきた。


ここで題名にもなっている「七人」は現在のヨーロッパ人のルーツになった母系の7系統のことである。

本書では後半、この7人についての物語を語っている。

自分がヨーロッパ人じゃないのでその辺は流し読みした (^ ^;

全世界のミトコンドリアDNAの系統は33もある。



現生人類は15万年前にアフリカで誕生して、その後5万年間は人類はそのままアフリカに留まっていた。

33系統のうち13はアフリカ人にしか見られない理由は、長いことアフリカに留まっていたことが原因だ。

10万年前に13のうちのたった1つの系統が中近東へ出た。

しかしそこで5万年間、人類は足踏みをしていた。

その当時、氷河期で人類が北進しにくかったかったからと考えられている。

その後、全世界に子孫が散らばった。

その全人類の母となった祖先を「ミトコンドリア・イヴ」と読んでいる。

本書出版後、新たに日本人に見られる新しい系統も見つかって、33系統より数は増えている。

次にサイクスはY染色体にまつわる『アダムの呪い』を出版した。

明日からそれを見て行く。

また3年間足踏みしているハルヒシリーズ
続刊、望む

2014年2月16日日曜日

こわい漢字(124)勤労に感謝!

昨日の「努」(つとめる)に関連する漢字、「勤」(つとめる)。

以前、「菫」のくくりですでに紹介した。

おさらい。

「菫」は、頭を剃った巫人が雨乞いに失敗して飢饉になった場合に、火あぶりになっている姿。

それに「力」(鋤)を合わせた「勤」は、飢饉にならないように農耕に勤しむ姿だ。


テストで赤点を取ったら火あぶりになるとなったら、みんな勉強に勤しめるのに(笑)

勤労の「労」(正字は「勞」)も「力」が使われている。

「勞」の「力」の上のかんむりは「火」が2つに「冖」。

この字は松明(たいまつ)を組み合わせた篝火(かがりび)の形で、聖火。


聖火で鋤(力)を祓い清める儀式を「勞」と言った。





神が「いたわる(労る)、ねぎらう(労う)」というのが原義であるが、「つとめる、はたらく」の意味となり、後に「つかれる、くるしむ」の意味にもなった。

勤労には感謝しましょう!

ウィザード・バリスターズ~弁魔士セシル
今期アニメ
クリエイターの勤労に感謝 (*´∇`*)

こわい漢字(123)努力する!

「努力」の「努」も「力」を含む漢字である。

「奴」は「女」に「又」を組み合わせてできているが、「又」は右手を表す漢字。

つまり、女性を手で捕まえて奴隷にすること、その奴隷を表す。


その奴隷に農作業をさせることが「努」。

そこから全てのことを「つとめる、はげむ」の意味になった。

強いて農作業させることが「努」なら、努力が辛いのは当然か(笑)

スポ根成分入りのアクセルワールド


2014年2月15日土曜日

一族の母になるには

ヨーロッパ人のミトコンドリアDNAは大きく7つのタイプに分類できる。

そのため、『イヴの七人の娘たち』という題名になっている。

イヴこそは、人類の最初の女性。そこから7つに分かれた、という意味で。

勿論、これはヨーロッパに限った話であるが。

その7つの部族のそれぞれの祖、母、になるための条件が2つある。

(1)娘を産むこと

ミトコンドリアDNAの祖になるためには、娘を産まないとミトコンドリアDNAを子孫に伝えられない。

(2)二人以上、娘を産むこと

一族の祖になるためには子孫を複数残さないとならない。

こう考えると、女性の場合、娘を産まないと永々と自分まで続いてきたミトコンドリアDNAが自分の代で途絶えることになる。

ミトコンドリアDNAを伝えることにどれだけ意味があるか分からないが。

日本のアニメの祖、母

2014年2月13日木曜日

男系と女系で系統解析が同じになるとは限らない件

2000年にそのY染色体を用いて男系からみたヨーロッパ人の歴史が明らかになった。

その結論は、サイクス達がミトコンドリアDNAから得た母系の結論と同じになった。
(80%は農耕が始まる前からいた狩猟民族、残りの20%は農耕とともにアジアからきた農耕民族)

そんなの当たり前でしょ!

と言ってはならない。

男の系譜と女の系譜は時に異なる。

有史以前から、人類は様々な部族同士、民族間で戦いを繰返してきた。

その度に、征服者の男性が被征服者の女性を戦利品として自分のものとして子供を産ませ、一方、被征服者の男性は殺され、よくても子供を残すことの許されない奴隷とされた。

よく知られているように、中南米では征服者のスペイン人に席巻された。
そして、西洋人と現地人の混血が進んだが、西洋人の男性が現地の女性に子供を産ませた例が、逆の例に比べて圧倒的に多かった。

そのため、中南米では、父系はヨーロッパ系、母系は現地人系という異なった遺伝子分布になっている場所がある。

ヨーロッパで父系と母系から導かれた結論が同じだったということは、ヨーロッパではかつて大規模の征服による女性の略奪等はなかったということを示唆している。

当たり前が当たり前であることのありがたさ

2014年2月12日水曜日

X染色体は誰とダンスを踊るのか?

減数分裂時には、全ての染色体が対合しなくてならない(その後組換えを起こす)。

常染色体は、減数分裂時にダンスを踊るパートナーの「相同染色体」がちゃんといる。



しかし、Y染色体は男性の細胞の中に1つしかない。

誰とダンスを踊るかというと、X染色体。

今でこそ、X染色体とY染色体は似ても似つかぬ形態をしているが、もとはY染色体はX染色体と同型であった。

左がX染色体、右がY染色体


一卵性双生児の片方が落ちぶれて、みる影もなくなったという風情だ。

しかし落ちぶれたとは言え、まだ昔の面影の片鱗は残している(X染色体と同じ配列部分)。

その部分で、X染色体はY染色体は対合する。

しかし、Y染色体がX染色体と対合できる部分は限定的なので、Y染色体のほとんどの部分はX染色体とは組換えを起こさない。

そのため、Y染色体は系統解析に適しているのだ。

それなら、X染色体も同じじゃね?

と思うかも知れないが、X染色体が女性の細胞に入った時には、X染色体は2本存在することになり、減数分裂時にその2本のX染色体は心置きなく対合をして全領域で組換えを起こす。

そのために、X染色体は系統解析には使えない、というわけ。

Anotherのダンスシーン
は良かった

2014年2月11日火曜日

アダムの系譜

ミトコンドリアDNAは母系遺伝なので、自分が持っているDNAは母からもらったものだ。

母は母の母からもらった。

と繰り返していくと、先祖は母の母の母の母というように先祖はどこまで行っても先祖はわずか一人しか辿れない。

しかし、実際には自分の先祖は、父母、祖父母、と2のn乗で増える。

だが、1世代25年として500年前、20世代も遡れば2の30乗で先祖の数は100万人を超えてしまう。

こうなってしまうと、その祖先の中には重複する者もでてくるし、祖先の系統をDNAでたどることはおよそ不可能になってくる。

そう考えると、必ず1人しか先祖がいない状態で辿れるということは却ってメリットと言えるのだ。


母系はこれで辿れるが、父系はどうやって調べたらよいか?

そのためには、男子だけに引き継がれる遺伝子で、かつミトコンドリアDNAと同じく組換えが起こらないものでなくてはならない。

それにピッタリのDNAがある。

それは「Y染色体」。



まずY染色体こそは、男系にのみ伝わるDNAである(本当は逆で、Y染色体をもつと男性になる)。

天皇家は先祖代々Y染色体を守っている。

アダム
エヴァは一体、どこへ辿り着こうとしているのか?

2014年2月10日月曜日

なぜミトコンドリアDNAが系統解析に適しているか?

基本に立ち返って、今回、なぜミトコンドリアDNAが系統解析に適しているか、を考える。

DNAなら核の中にそれこそたくさんのDNAが蓄えられているが、なぜそれらを用いないでわざわざミトコンドリアに含まれるDNAが系統解析に使われるのであろうか?

それは核のDNAが頻繁に起こす組み替えが系統解析には不都合であるからである。

核の中には、父と母からそれぞれもらった相同染色体が存在するが、精子や卵子を作る際の減数分裂時には、その相同染色体どうしが対合して交叉して、遺伝子を入れ替える、ということを行う。


相同染色体間で遺伝子の入れ替えが起こってしまうと、遺伝子の変異を頼りにして系統解析している遺伝学者にとっては、それらが減数分裂の度に気まぐれにシャッフルされるということになると、データ全く信用できないことになる。

つまり、系統解析するには組換えが起こらないDNAを用いる必要があるわけだ。

組換えを起こさないミトコンドリアDNAはうってつけというわけだ。

それに対して、サイクスの同業者から、ミトコンドリアDNAも組換えを起こす可能性があるという論文がだされた。

もしそれが本当なら、ミトコンドリアDNAを使って積み上げてきた彼のこれまでの議論が水泡に帰してしまう。

しかし、その後にその論文はデータを間違えていて、実際にはミトコンドリアDNAで組換えが起こっていることを指し示す証拠はなかったことが判明した。

実際、ミトコンドリアは母(卵子)からしかもたらされないので、そのDNA組換わりようがないのだけれど。

エヴァとガンダムが交叉組換えを起こしたもの

2014年2月9日日曜日

こわい漢字(122)静と動

「静」と「動」、これは両方とも「力(鋤)」が使われている漢字。

分かりやすい「動」の方から。

「重」は「童」であり、眼の上に刺青をした受刑者、奴隷を意味している。

その童が鋤(力)を持って、農耕に従事する様子から、体を動かす、という意味になった。



農耕に従事する、はたらく、という言う意味では「働」が使われるが、これは我が国で作られた国字。

一方、「静」(正字では靜)は「青(靑)」と「争」からなる。

「靑」は青丹(あおに)のことで、青丹とは顔料となる岩緑青(青は緑、丹は土)。

奈良は青丹の産地であったことから、青丹よし、が奈良の枕詞となった。

「争」は鋤を手で摑んでいる形。



つまり、農具を青丹で浄めて虫害を防ぐことで農耕の安らかなること、安寧をねがったために、「静」はやすらか、しずか、の意味になった。

動も静も農具からきている言葉なのは、たまたまだろうが、面白い。

今や労働はホワイトカラーが多くて、手にペンをもった象形文字が「動」に相応しい、か。

悪く思うな、これも仕事だ
手には殺傷兵器
Fate/Zero、衛宮切嗣

2014年2月8日土曜日

こわい漢字(121)賀

「加」は鋤を表す「力」と祝詞を入れる箱「口」の組み合わせて、鋤に祈りを加えることだった。

「賀」はそれに「貝」

この「貝」は子安貝、宝貝の表している。



きれいな貝であるところから、古代中国殷では貨幣として使われていた。

上からみたぷっくらした形状から妊娠中の女性を想起させ、また下からみた形状が女性器を想起させるところから、子孫繁栄、豊穣を表した。

つまり、この貝にも農耕の生産力を高める祈りに使われた。

それを組み合わせた「賀」は、もともとは農作物に関連した儀式に関連した字であったが。



その後、すべてのめでたい儀式を寿ぐ、祝う意味として使われるようになった。

カーニバル・ファンタズム
TYPE-MOONいっぱい詰まっためでたいアニメ

2014年2月7日金曜日

ミトコンドリアDNAの変異の速さ(3)

昨日のつづき

ミトコンドアDNAの変異が子孫に伝わるためには、まず女性でそれが起きなければならない。

なぜなら、ミトコンドリアは女性の卵子由来でしか、子供に伝わらないからである。
(精子は核DNAは卵子に渡すがミトコンドリアは卵子に持ち込めない)

それも女性の生殖細胞系で起きなくてはならない。

体細胞で変異が起きてもそれは子供に伝わらない(それは核のDNAについても同じ)。

しかし、女性の生殖細胞系が分裂する度に新しい細胞に持ち込まれるミトコンドリアはほんの少ししかないようなので、もし新たなDNAの変異をもつミトコンドリアがその狭き門をくぐり抜けられたら、新しい細胞内のミトコンドリアDNAの変異が大勢を占められることになる。

女性の生殖細胞系は24回細胞分裂するので、このような機会が24回あることになる。

しかし、やはり、次の世代に変異遺伝子が伝わることはまれだ。

サイクスは過去におけるミトコンドリアDNAを再検査することで、人類の1. 5%のひとがヘテロプラスミーであることが判明した。

その変異が現れて、その変異に完全に置き換わるのに6世代かかることも分かった。

変異が広がるとは限らず、消失してしまうことも勿論ありうる。

結局、その研究を通して算定したところ、ミトコンドリアDNAの変異の速度は2万年に1変異ということがわかり、以前の前提が間違っていないことが明らかになった。

メデタシ、メデタシ、と (^ ^;

消失は御免被りたい

2014年2月6日木曜日

ミトコンドリアDNAの変異の速さ(2)

昨日のつづき。

では、いったいDNAの変異速度はどのように見積もればよいのだろう。

基本的には2つの方法がある。

(1)次の世代に移る際の直接な観察によって測定する(親と子での違いをみつける)。

(2)分岐した時期がわかっている2つの異なるグループの中で蓄積された突然変異の数によって測定する。

ちょっと考えれば、(1)の方が何たって直接的だからいい。

しかし、もし変異が数万年に1つの変異が起こるようなものだったら、そのまさに変わる瞬間を捉えるというのは難しかろう。

サイクスは何組の親子を調べれば、自分たちが想定している速度の変異を調べられるかを算定したところ、1000組の親子を調べる必要があることが分かった。

それはとても大変な作業である。

そのために、違う方法で調べることになった。

それはミトコンドリアDNAの特徴をうまく利用したものだ。

細胞の核内には親からもらったDNAが1コピーずつ入っている。

しかし、ミトコンドリアの中には複数(10コピー程度)のDNAコピー存在する。

なぜ複数コピー収納されているかというと、

ミトコンドリア内における呼吸の際に大量の活性酸素が発生する。

DNAがその活性酸素のダメージを受けやすいために、それを前提に予めたくさんコピーを用意しているというわけだ。

そのために、もしそのうちの一つのコピーにたまたま変異が入った場合には、配列の異なるDNAが1つのミトコンドリアに、つまり、1つの細胞中に混在していることになる。

その状態を「ヘテロプラスミー」と呼ぶ。

http://ushitaka7.blogspot.jp/2012/08/28.html

そのヘテロプラスミーの状態をうまく見つけられれば、変異の瞬間、変異の速度を割り出せるのではないか、と思い当たった。

しかし、細胞中にはミトコンドリアは数百くらいある。

そんな中で一つのミトコンドリアの中の一つのDNAに起きた変異がそんなに都合良く次世代に伝わり広がるだろうか?

実はそこに伝わりやすいカラクリがあった。
(明日につづく)

カラクリ人形、日和号
エネルギー切れしなければ、勝てなかったかも
刀語


2014年2月5日水曜日

ミトコンドリアDNAの変異の速さ

昨日のつづき

サイクスの出した「ヨーロッパにおいて中近東からの農耕民族からの侵入は起こっていない」とする説についた難癖の一つが、

ちゃんとミトコンドリアDNAの変異の速さを見積もれているのか?

というもの。

サイクス達はミトコンドリアDNAのDループという箇所の変異を比べて、先祖の分岐時間を割り出している。

まずこのDループだが、意味のある遺伝子をコード(暗号化)していない領域と思われている。



なぜここを選んだかというと、遺伝子(つまり、どんなタンパク質をつくるかの暗号)をコードしている領域だと、DNAにランダムに変異が入るとそれが有害な変異になってしまうことが多くて、そうなると細胞(生物)は生き残れないから、変異の起こりやすさを現存する生物で見積もることが難しくなるからだ。

全く遺伝子をコードしていない方が、どんな変異がDNAに起こってもその生物はいきてゆける。

ただ、Dループが遺伝子をコードしていないからと言って、本当に何にも意味を持たないかどうかに関しては自分は懐疑的。

なぜならば、意味のないものが何億年も維持されるわけはないから。

それはさておき、

サイクス達は当初、Dループ内の変異は1万年に1変異として見積もってきた。

本当にそうなのか?

もし変異が10倍の速さだったら、民族の置き換わりがなかったという結論が180度ひっくり返ってしまう。
(明日につづく)

2014年、ガンダムUCが終わる
絶対生き残るだろうアニメ