2012年4月30日月曜日

コラーゲン、効く? 効かない??

生物学をあまり勉強して来なかった大学一年生に以下の問題を出す。

1. コラーゲン入りの飲料
2. コラーゲン入りの化粧品

このうちどっちが効く?

と。

その前提として、コラーゲンは何にいいか? 勿論、お肌にいい、と漠然と答えが帰って来る。突っ込んで訊くと、肌のはりとかにいい、と答えを引き出せる。

つまり、コラーゲンを摂取することで自分のお肌にコラーゲンがふえお肌のはりを増加させる事を消費者に期待させる商品が1もしくは2ということになる。

コラーゲンは細胞中にあって肌の弾力性をもたらしている物質であり、年齢とともに失われるものでもあり、それが肌のはりの喪失をもたらすことは正しい。

しかし、コラーゲンがどんな物質なのか? は敢えて先には質問しない。

そこで、上記の質問。

お肌の保湿成分入りのクリームとかの類推で2.に関しては効きそう、と答える学生がいる。

1.に関してもビタミンCとかの類推で効くのではとの答えもある。


正解は、どちらも上記のような効果は期待できない。

なぜならば、コラーゲンはタンパク質だから。

コラーゲンはwikiに構造が書かれているが(http://ja.wikipedia.org/wiki/コラーゲン)、紛れもなくタンパク質である。

タンパク質は簡単に言えばアミノ酸が紐状に連結した物質である。小中学生の頃に「食物中のタンパク質は胃や腸で分解されてアミノ酸になり体に取り込まれます」と習うが、これを思い出せば、タンパク質がアミノ酸からできていることは合点がいこう。

この「食物中のタンパク質は胃や腸で分解されてアミノ酸になり体に取り込まれます」さえ押さえておけば、まず、1.では取り込まれたコラーゲンが自分の肌細胞のコラーゲンに即ならないかが分かる。つまり、口から取り込んだコラーゲンは消化管で分解されアミノ酸になってしまうのだ。

全ての動物は、口から取り込んだタンパク質を消化管で一旦分解して、その分解されたアミノ酸を細胞が取り込んで、そこで細胞の働きに合ったオーダーメイドのタンパク質を再構築するわけだ。

だから肉を食べたからといって、その肉成分のアミノ酸が全て筋肉になると期待するのは間違い。
必要とする以上の筋肉タンパク質を細胞は作ってくれない。

これはコラーゲンでも同じ。

コラーゲンを食べたからといって、自分の細胞のコラーゲンがその分増えると期待するのは間違いなのだ。魚を食べて人魚になれると信じ込むのと同レベルの過ちと言っても良い。


あるサイト(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1474457824)には、コラーゲンにはヒドロキシプロリンという特別なタンパク質が含まれているため、コラーゲンの材料をとることに意味がなくはない、的なコメントがあるが、それは正しくない。

タンパク質を合成する際、ヒドロキシプロリンは使われない。プロリンが材料として使われてコラーゲンが組立てられた後に、プロリンが変化してヒドロキシプロリンになる。つまり、ヒドロキシプロリンを摂取してもそれが直にコラーゲンに使われることはないのであるから、ヒドロキシプロリンの効果を唱うのは詐欺に等しい。

*なお、ヒドロキシキプロリンはプロリンに素直に戻るというわけではなさそうである。
(参考:http://yoshibero.at.webry.info/200803/article_2.html


では2なら肌細胞にぬっているし、細胞内部に直接届くのか?

これも残念ながら細胞内部には届かない。細胞には細胞膜というバリアがあって勝手に外部から好ましくない物質が入って来ないようにしている。当然、この「好ましくない物質」という中には病原菌も含まれている。あまり何でも取り込んだらそれこそ細胞にとっては危険きわまりない。

基本的に、細胞中に存在するタンパク質は自分の遺伝子から合成されたもののみである。細胞の外部からタンパク質がやってきても容易には侵入できない。

つまり、たとえ鮫のコラーゲンがどんなに鮫にはよくても、外部から塗られた鮫のコラーゲンがヒトの細胞中で働く事は期待できないのである。さらに言うと、鮫のコラーゲンのタンパク質はヒトのコラーゲンのタンパク質とはアミノ酸の配列が異なるため、鮫のコラーゲンを取り込んでヒトの細胞内で働いてもらおうとしてもダメである。

分かりやすいたとえをするなら、

牛肉(ウシの筋肉のアクチンとミオシンというタンパク質を豊富に含む)を肌の上にペタと湿布薬のように貼ったら、ウシの筋肉がからだに装着されて、筋肉増強できるか? を想像してみよう。

これを細胞(生物)が許せば、容易にヒトは半人半牛に変身、トランスフォームできる(笑)

それが可能なら私は背中に鷲の羽根をとりつけてみたい(笑)

このたとえの愚を笑えるならば、コラーゲン入りの化粧品を肌に塗る愚に思いを馳せられるはず。

コラーゲンを肌に塗るのは、牛肉を肌に貼るのと同じこと。


いつまでも若々しくいたいという女性の純粋な心理、消費者の無知、につけ込むようなさもしい商品が売られていること、特に大手有名企業(検索すればそのような心ない有名企業の名前を参照できる)から売り出されていることに落胆する。


コラーゲンたっぷりなもつ鍋、もしかり。


こんなことに一々目くじらを立てるなんて大人げない、と関係者達は言うだろうか。

こちとら、それを百も承知で夢を売っているのだ、と開き直るのだろうか。


消費者をアホ扱いしている商品の代表格として、今回はコラーゲンを採上げた。

(補足)
細胞にコラーゲンが必要なのはその通りであり、食事から摂取できるタンパク質で自分の細胞にコラーゲンを作ってもらえばよい。コラーゲン自体を摂取しても期待される効果はないと言うだけの話し。

細胞でのコラーゲンの合成(転写もしくは合成後のヒドロキシプロリン化)を促すような(副作用のない)化学物質があれば、これこそ細胞中のコラーゲン増量に効くと言える。

ヒドロキシプロリン化の際に必要となるビタミンC(アスコルビン酸)を摂取することで、コラーゲン合成促進するというのは有り得そうだが、効果のほどはいかばかりなのかは調べ切れず。 

まあ、ビタミンCは抗酸化剤としても細胞の酸化(老化)防止に効くわけだし、取り過ぎても尿といっしょに排出され副作用はあまりないというし、ビタミンC摂取は心がけるにしくはなし、と言ったところか。




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