2012年5月25日金曜日

マッチョマウス

生物にとって(人にとっても)、大事ではない遺伝子というのは基本的にない。
進化の過程で保持されていることの一点において、なんらかその生物の子孫継承に役立ってきた筈である。

現在の生物学(分子生物学、細胞生物学、発生生物学のいずれにおいても)では、ある遺伝子産物(タンパク質)がどのような働きをしているのかということの解明が進んでいる。
しかし、ある意味、それはタンパク質のカタログ化である。

こういうと、世界のどこにどんな動物や植物がいるのかという博物学的研究のように聞えてしまうが、ある意味そうである。どんな遺伝子があって、どんな働きをしているのか、その総カタログを作成しているようなものである。

ヒトにはおよそ23000の遺伝子があるが、その大半はその働きはよく分かっていない。

遺伝子の働きを知る、調べるための手法としてよく使われるのは、その遺伝子を狙い撃ちで欠損させて(ノックアウト)それにより、表現型にどのような変化が現れるかを調べるというものである。

例えば、ネズミのある遺伝子を破壊した事により筋肉が増加したら、その遺伝子は筋肉の増加に対して抑制的に働くことが予想される。

実際にそんなマウスが作られている。
(マウスは哺乳類動物の中では遺伝子破壊が比較的容易に行える種なのでよく使われる)

右側がミオスタチンという遺伝子をノックアウト(KO)したマウス。ミオスタチンを欠いた右側のマウスの筋肉量は、野生種(左)の4倍になるそうな。


こちらもミオスタチン欠損のすごすぎる牛


それとヒト!


(多分家系。遺伝子改変はされていない筈ですよね)

はい、これはまさしく『グラップラー刃牙』の世界ですね。



このように、
ミオスタチンは筋肉成長を抑制する因子であることが示唆された。

ミオスタチンが何のためにあるのか?
筋肉が多い方がいいじゃね?
と思ったひと!

ミオスタチン欠損個体の問題としては、皮下脂肪が極端に少なくなる。食べる量がはんぱない。
食べ物に制限のある自然界では、筋肉が維持できず、皮下脂肪も少なく、野生種より餓死しやすいと思われる。野生の動物では明らかに淘汰されてしまう。

すでにマンガ『嘘喰い』にミオスタチン欠損のマッチョ刑事が登場しているが、あまりまだ有名ではない、かな?



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