昨日、トランスポゾンを採上げたのにはわけがある。
トランスポゾンはいつも活発に増殖している訳ではない。
もしそうなら、あっという間にヒトのゲノムはトランスポゾンだらけになるだろう。
(もうすでに40%も乗っ取られてはいるが、笑)
(図中の利己的遺伝子のうんちくに関してはいずれまた)
*ここで遅まきながら、
トランスポゾンには転移するだけでコピー数は増えないDNA型と、元の部位に居続け、コピー数を増やすRNA型(レトロトランスポゾン)がある。
http://www.cb.k.u-tokyo.ac.jp/cb/coe/hujiwara_20050221.pdf
http://ja.wikipedia.org/wiki/レトロトランスポゾン
実はトランスポゾン部位のDNAはメチル化されていて不活性化している。
そのため、トランスポゾンがウイルスのように増殖の猛威を振るう事は通常はない(安心して下さい)。
DNAのメチル化が低下するような変異体ではトランスポゾンが暴れ回り、生物にとっては大打撃になる。
逆に言えば、DNAのメチル化がいかにこのトランスポゾンという魔物の護符になっているかが分かると言うもの。
図左はシロイヌナズナの野生型。右はDNAメチル化が減少した変異株。トランスポゾンが暴れ回って、様々な表現型の子孫が生じる。
http://www.nig.ac.jp/jimu/soken/setumei2012/kakutani.pdf
ではどのような時に、トランスポゾンはコピー数を増加させるのであろうか?
これは生物進化と絡んだ話しとなり、かなり面白い。
一般論で言うと、生物がストレスに曝されるとトランスポゾンが活性化して転移・増殖する。
植物では高温ストレスで活性化する"ONSEN"と命名されたトランスポゾンが見つかっている。
http://first.lifesciencedb.jp/archives/2508
当然、DNAのメチル化が低下しているのではと予想されたが、話しはそう単純ではないらしい。
ストレス --> トランスポゾン活性化によるゲノムの大規模な変革 --> 生物の進化
につながっているのではないかと考える研究者がいる。
ストレスに曝されて生きるか死ぬかという時には、どうやら生物は一か八かの大博打に打って出るのではということ。
細胞内で突如トランスポゾンが目覚め、それによりゲノムがトランスポゾンの増殖・挿入によって、ほとんどの細胞(99%以上)ではトランスポゾンがそのゲノムに致死的なダメージを与えるだろうが、中にはたまたまストレスに生き残るようなラッキーな変異が生じる、と。
どうせ死ぬなら、清水の舞台から飛び降りるか、的な。
この仮説は魅力的ではあるが、まだ検証されていない。
(そもそも進化という分野の学問は検証が難しい)
そもそも、子孫に伝わる細胞である生殖細胞でこのゲノム改変が起こっているかはよく分かっておらず、それが起こっていないとしたら、進化の原動力とはなり得ない(動物の場合、体細胞で起こっても意味なし)。
しかし、ゴミにも何か合目性がある、と信じたい研究者の気持ちは痛い程よく分かる。
ポケモンキャラのようなある方向への進化ができればいいのだが、トランスポゾンはゲノムにランダムに挿入されるため(どこに挿入されるかは決まっていない)、無方向性の進化になる。多様性を増すのも重要だけど。
0 件のコメント:
コメントを投稿