この「X染色体」、「Y染色体」はどのように命名されたのであろうか?
20世紀当初にアメリカのコロンビア大学で活躍した遺伝学者のトーマス・ハント・モーガンはショウジョウバエを用いて染色体と形質の関係について精力的に研究を行った。
モーガン
モーガンは様々なハエの変異体を単離して解析した
それまでの研究で、染色体がメンデルの予想した「遺伝子」なのではないかと漠然と思われていた。
しかし、生物の染色体数は千差万別である。
ショウジョウバエだと4本しかない。
4つしかない染色体では、到底、たくさんの遺伝子をカバーできない。
つまり、1つの染色体は複数の遺伝子を持つことが想定された。
その中で、モーガンらは次のことに気づいた。
(1)ある2つの形質がペアを組んで伝わる。
これから、その形質を暗号化している遺伝子が同一の染色体上にあるのではないかと推論した。
(2)時折、その2つの形質がばらけて遺伝する。
上記の(1)を認めるのならば、このことは染色体というものが不変的なものではないことを示唆する。
では染色体は時々千切れるのか?
実際に千切れる。
それが、減数分裂時に相同染色体間での組換えだ。
(3)2つの形質のばらけ具合の頻度がペア間で常に決まっていること。
その形質を暗号化している遺伝子間が離れているほど、ばらけやすくなる。
そこから遺伝子間の距離、という概念がもたらされた。
遺伝子間の距離の単位は「モーガン」と命名された。
さらに、それは染色体上に遺伝子が一次元的に並んでいることを暗示する。
その後、染色体がDNAの長い紐の集合体であることが分かり、実際に長いDNA上に遺伝子が一次元的に並んでいることが分かった。
モーガンたちが偉大であったのは、ちっぽけなハエの形質から遺伝子の本質に迫る推理を展開したことであった。
そして生殖細胞で観察される減数分裂時に相同染色体が対合することにも彼らは気づいた。
その過程でX染色体は見つけられた。
(つづく)
腕もときどき千切れます
エヴァ、ぜるえるさん、強し
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