2012年6月3日日曜日

静岡がんセンター見学リポート(第2夜):腫瘍マーカー開発

静岡がんセンターのシンボル


富士山と病院のもてなしの「心」をマッチさせたもの。

静岡がんセンターの研究所で行われている研究だが、

(1)新規腫瘍マーカーの開発

癌の治癒率を高めるためには、癌が転移する前に早期に発見することが大事である。

日本で腫瘍マーカー(癌細胞に特徴的な指標となる物質)は約40種類が保険で認められているが、その中で癌の早期発見に役立っているのはたった1つのみという。



http://ganjoho.jp/public/dia_tre/diagnosis/tumor_marker.html


その1つは、男性の前立腺がんの早期発見に利用されているPSAというタンパク質である。

ではその他の腫瘍マーカーが全く役に立たないかというとそうではなく、癌治療の経過観察には役立っている。

http://www.beckmancoulter.co.jp/campaign/blue_clover.html#2



癌の早期発見に役立つための腫瘍マーカーの開発研究に世界中が鎬を削っている。
静岡がんセンターでも、採取した血液で早期発見できるような腫瘍マーカーの開発に力を入れている。

それは"omics"(オミクス)と呼ばれる大規模解析手法を利用したもの。

ゲノミクス(DNAの網羅的解析)
トランスクリプトミクス(転写されたmRNAの網羅的解析)
プロテオミクス(発現しているタンパク質の網羅的解析)
メタボロミクス(アミノ酸等の有機化合物の網羅的解析)

この中で、腫瘍マーカー開発に役立ちそうなのは、プロテオミクスとメタボロミクスである。

プロテオミクスでは、早期発見の診断マーカーに使える、癌細胞特異的に分泌されるタンパク質や、細胞表層に現れるタンパク質を見つけようとしている。

メタボロミクスでも、癌細胞特異的な代謝産物の変化を捉えて、早期発見の診断マーカーに使おうとしている。

癌の治癒率を上げるためには、早期発見に使える診断マーカーを一つでも増やす必要があるが、癌細胞と言っても多種多様な癌細胞がある。どんな遺伝子が変異して癌になっているかで、個性が千差万別である。

そのため、どんな遺伝子が変異して癌になっているかで、その腫瘍マーカーも異なってくると予想される。

つまり、腫瘍マーカーも今後何百種類の開発する必要があるだろう。


このように、上記の取組みと並行して、癌細胞の個性を的確に迅速に判断するための技術の開発が必要となる。

これに関しては、次回。



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