2012年6月14日木曜日

俺グレちゃる!

昨日のつづき、

しかしストレス下においても表面上、表現型に違いのでない遺伝子の欠損もある。

そういう遺伝子は、得てして天の邪鬼の生物学者の興味を惹きつける。
遺伝子として存在する以上、やっぱり何らかの役には立っているんじゃないかと。

そこで、野生株と変異株を50:50で混ぜ合わせて何世代も培養を続けるというような実験が行われた。

もしその遺伝子が全く細胞増殖に必要ないのなら何世代増殖させても、比率は50:50で代わらない筈である。その結果、生育に違いの見られた遺伝子も見つかった。その遺伝子はやっぱり、ある方が増殖にメリットがあるということだ。

しかし、それでも違いの見られなかったものもいる。

だから、負け惜しみでこう呟いてみる。
その遺伝子は実験室の環境を生き抜くのには必要はなくても、自然界を生き抜いていくためにきっと必要になんだよ、要らない遺伝子はない筈だから。。

もしある重要な遺伝子が変異したら、その生物個体にはこの世からの退場を促すホイッスルがすぐさま鳴り響く。必要な遺伝子にはフリーハンドの余地がほとんどない。

宮家から抜けたい、と言ったヒゲの殿下が先頃なくなったが、先祖から代々受け継いできた仕事(例えば、DNAポリメラーゼのDNAを複製するという稼業)を簡単にほっぽらかすわけにはいかない。
重要な遺伝子には、ニートになる自由も、職業選択の自由もない。


片や、いなくなっても細胞が困らないような重要度の低い(背負う家系の重みのない)遺伝子は皮肉にも将来の巾が広がる。
多少やんちゃして(変異して)、グレて働かなくなってもそれによる損害がない。

(Fate Zeroより やんちゃなライダーさん)


しかし、そのようなあまり役に立っていない遺伝子に関しては急速に変異が蓄積し、ついにはゲノムから失われても周囲に気付かれもせず、ひっそりとゲノムから退場することになる。
紅世の徒(ぐぜのともがら)に喰われたトーチのように(分かりにくい比喩ですみません)。

そんな人生、寂しすぎる。


このように、もし要らない遺伝子が現在この瞬間にあったとしても(例えば尻尾を作るような遺伝子)、そのような遺伝子は遅かれ早かれゲノムから消えゆく運命にある。

正に、働かざるもの食うべからず。

実は、そのような遺伝子の残骸がヒトのゲノム中にはうようよいる。
死に切れない、ゾンビ、Walking Deadのような。

(つづく)


(補足)
面白い遺伝子がショウジョウバエで見つかっている。

「サトリ(satori)」と名付けられた遺伝子(転写因子タンパク質を暗号化する遺伝子)が変異した雄のハエは雌に全く興味を示さないのでこう呼ばれたが、その後、この変異雄ハエは雄に興味を示すことが示され、興味の対象が変わってしまう事がことが分かった。
つまり、satori本来の遺伝子は雄の脳を雄化させるための遺伝子であり、これが働かなくなったため、雄であっても脳が雌化して、雄に興味を示すようになったと解釈できる。

なかなかハエも悟れないようだ(笑)

(雄同士が輪になって求愛行動をするサトリ君たち)


http://www.bsc.tohoku.ac.jp/contents/c2_32/c2_32_yamamoto_d.html


生物個体は生きてるだけじゃ次世代に自分の遺伝子を残せない。
子供を作ってこその生物。コピーを残してなんぼのDNAの世界。

このサトリ遺伝子は(種の伝播には)必須遺伝子と言えますね (^-^)



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