2012年7月25日水曜日

ミトコン(10)羽を下さい!

捨ててしまったものを後になって悔やむことはある。

細菌が一度遺伝子を捨ててしまって、それが再度必要になったらどうするか?

実は、遺伝子は復活することがある。

細菌の場合、周囲の死んだ細胞からでてきたDNAが取り込まれたり、別の細胞との融合で遺伝子が取り込める。




自然界では、ある個体が遺伝子を失っても、別の個体はまだ遺伝子を失ってないことがある。

我々人間が千差万別のように、細菌の集団もAさん、Bさん、Cさんで千差万別なのだ。
研究室で培養されているような単一クローンではないということ。

僕はこの遺伝子を誤って捨ててしまったけど、君ちょっと融通してくれない?、的なことが細菌の集団内である。

つまり、細菌は集団で遺伝子を保持しているようなもので、個人で保持していなくてもそれで即、その細菌の子孫が全滅ということはない。

さらにすごいことに、異種の生物からも細菌は遺伝子を取り込める。
このような遺伝子の伝わり方を「遺伝子の水辺伝播」と言う。


http://ja.wikipedia.org/wiki/遺伝子の水平伝播



子孫に受け継がれる遺伝子の流れを垂直方向とした時の水平方向への遺伝子の受け渡しである。
ミトコンドリアから核への遺伝子の移動も一種の遺伝子の水平伝播である。

ただ、これがあまりに激しいと個体としてのアイデンティティが保てないのでは? と人ごとだが心配になる。

事実、最も激しく遺伝子の水平伝播が起きている淋菌(淋病の病原菌)ではあまりに遺伝子の置き代わりが激しすぎて種のゲノムの統一的な像が確定できないほどだ。
なんと淋菌はヒトからも遺伝子をもらっている。

ヒトでも遺伝子をどんどん取り込んで日々進化できたら、ある朝起きてみたらライオンの顔になっていて、そのまた次の日には羽が生えてる的な。




天使の羽には憧れる。


一方、真核生物では、接合、交接、交尾、受精、等、明らかに同じ遺伝子セットを持つ同士でつがわないと子供ができないシステムを採用しており、あまりに集団内のゲノムがバラバラだと子孫が残せない。

それもあり、真核生物では水平伝播による遺伝子のやり取りは原核生物程には融通無碍になっていない。

ただし、真核生物でも感染した細菌やウイルスによって新たに遺伝子が持ち込まれることがある。
シロアリが木を食べてセルロースを分解するセルラーゼの遺伝子も水平伝播で細菌類から持ち込まれた可能性が指摘されている。


ヒトでもそのような遺伝子の例は知られているが、それが役に立っているかは不明。
羽をもたらす遺伝子をもったウイルスよ、来い!
ビールジョッキ片手に夏の夜空を羽搏いたらさぞ気持ちいいことだろう。


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