2013年3月4日月曜日

嫌煙権がなかった1980年当時の日本

少々古い本になるが、伊佐山芳郎『現代たばこ戦争』(岩波新書、1999年刊)は非喫煙者が「たばこの煙を吸いたくない!」という今では当たり前の権利を勝ち取るまでの歴史が分かって面白い。




日本で嫌煙権という言葉が誕生したのは35年前。

その確立を求めて、当時弁護団が訴訟を起こした。

嫌煙権訴訟(http://ja.wikipedia.org/wiki/嫌煙権訴訟

日本において、1978年に弁護士・学者らが結成した「嫌煙権確立を目指す法律家の会」のうち弁護士12人が弁護団となり1980年4月7日に起こした民事訴訟

国・国鉄・日本専売公社(後の日本たばこ産業)を被告とし、国鉄車両の半数以上を禁煙化するよう、また国鉄車両に乗ることによって煙害を受けている原告に損害賠償を求めた(当時、国鉄車両で禁煙車は新幹線「こだま」の16号車だけだった)。非喫煙者の権利を主張する訴訟は日本初のもので、問題提起型の訴訟。

この訴訟において国や専売公社を被告としているのは、たばこの有害性が明確になってきた1970年代以降も国は適切な行政政策(たとえば、省令・通達における職場や公共施設の禁煙化など)や立法措置をほとんど行わず、結果として非喫煙者の権利を侵害している・たばこの害を作り出し、その有害性を公にしない専売公社も対象であるとみなしたからである。訴訟提起後、国鉄の列車の禁煙席設置や公共施設の分煙および禁煙化が進むようになる。


このように、当時いかに非喫煙者のうち嫌煙者にとって悲惨な状況であったか分かろう。

この訴訟が現在の公共施設、公共機関の禁煙、分煙の道筋をつけたという上で非常に重要であった。

しかし、当時の判決が凄まじく今読むと噴飯もの。

1987年3月27日東京地方裁判所判決では

① 国鉄以外にも交通手段は存在するので煙害を回避することは困難ではない。

②受動喫煙の害・不快感は認められるが、国鉄車内における受動喫煙は一過性であって受忍限度の範囲内である。

③日本社会が喫煙に寛容であることを判断基準にすべきである。

ことを理由に請求棄却となる。

①は、タバコの煙を吸いたくなければ、新幹線(および全ての列車)に乗るな、と言っているのに等しい。考えられない様な判決だ。

②は、東京大阪に新幹線で3時間くらいの間、タバコの煙、我慢できるでしょ!?、って言っている。裁判官が愛煙家ばっかりだったのではないか? 

③こそが、その当時の社会の世相だったわけだ。



ただし原告側は、訴訟以降に国鉄車両の禁煙車・席が増加した(35%が禁煙車両に)ことなどを判断し、実質的な勝訴とし控訴せず確定した。



当時からみれば現在は隔世の感がある。

しかし、まだまだ飲食店でのタバコの害に非喫煙者は悩まされ続けている。

昔の非喫煙者が裁判まで起こして苦労して勝ち取ってくれた嫌煙権を育てていかねばならない


アトムに始まったアニメも大部育った


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