例えば、母親と胎児の関係にしてもそうだ。
母親は自分の遺伝子をもつ子供なんだから、慈しみ大事に育てる筈と単純には考えられる。勿論、本能的にはそうインプットされている。
しかし冷静に考えて、母親からみたら胎児は半分は他人の遺伝子を持っている、遺伝子的に半分他人。
胎児からみても同様で、母親は遺伝子的に半分他人。
遺伝子からみたら、自分が乗っている生物個体が一番可愛い。
つまり、胎児から見たら、母親よりも自分がかわいい。
もし片方が死ななければならないとしたら、どちらも自分が生き残りたいと思うだろう。
胎児はホルモンを使って母親の血液を自分の方に迂回させ、母胎の組織への流れを減少させる。
また、胎児は自分により多くの栄養を回してもらうために、母親の血糖値を増加させようと、胎盤を介して胎盤性ラクトゲンを分泌する。
胎盤性ラクトゲンはインシュリンの働きを阻害する。
インシュリンは血糖値を下げる働きをもつため、つまり、胎盤性ラクトゲンは母胎の血糖値をあげることになる。
そのため、しばしば母胎は必要以上に血糖が増加し糖尿病になってしまう。
それに対抗するため、母親は自分の血糖値が上がりすぎないように、インシュリンをより多く分泌しそうさせまいとする。
しかし欲張りな胎児は血糖値を下げさせまいと、さらに胎盤性ラクトゲンを分泌し、母親も負けじとインシュリンをさらに分泌し、と、とめどない軍拡競争が続く。
このように、仲が良さそうに見えて、栄養を巡って母親と胎児の静かな熱い戦いが繰り広げられている。
そのため、胎児は母親のお腹に寄生したエイリアン(あの怖い映画『エイリアン』の)に喩えられることもある。
ここで興味深いのは、この胎盤性ラクトゲンは父親由来の遺伝子からつくられてくるということ。
つまり、父親は母親から栄養をできるだけ搾取し自分の遺伝子をもつ胎児を大きくしようと企む。
ヒトのように一夫一妻性をもつ動物種はマイナーであり、全体の数%しかいない。
そのため、父親にとって胎児の母親は、ゆきずりの恋をした相手、という存在にしか過ぎず、大事にしたいパートナーでは決してない。
つまり、母親は、父親・胎児の連合軍と戦っていることになる。
このように自分の血(遺伝子)を分け与えた子供にさえ反乱を起こされている母親、ってかわいそう。
せめて、産まれて物心がついたあとはお母さんに優しくしましょう (^ ^;
仲が悪そうにみえて、実はいい。
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