しかし、死刑執行人が別室で電気椅子のスイッチをオンにするのと違って、スイッチをオンにしたら自分も死ぬ自爆テロリストに似る。
それは進化の過程でどのように獲得されたのか?
ミトコンドリアの先祖の細菌はやはり細胞に死をもたらす装置を持っていたのか?
そのヒントを教えてくれるのが、アポトーシス時にミトコンドリアから細胞質に刺客が漏れ出て行く機構である。
通常、ミトコンドリア外膜からチトクロムcが細胞質に出ることはない(そんなことになったら細胞はすべてアポトーシスで即死です)。
それがアポトーシスの時になると、タンパク質が外に出られるような穴があく。
VDAC(voltage-dependent anion channel、電位依存的陰イオンチャンネル)というタンパク質がつくる穴がミトコンドリアにはあるのだが、通常その穴の大きさは小さくてチトクロムcのようなタンパク質は通り抜けられない。
しかしアポトーシス時にはその穴が大きく開く。
常にはVDACにはBcl-2というタンパク質が結合してその穴は閉じているが、アポトーシスが起こる時にはよく似たBaxというタンパク質に置き換わってその穴が開き、チトクロムcが細胞質に放出される。つまり、Bcl-2ファミリータンパク質が死を制御している。
(細胞の分子生物学より)
すでに細胞に死ぬ装置は全部備わっていてそれを隠し持っているだけだ。
ミトコンドリアに穴が開くかどうかが鍵なのだ。
(そう思うと怖い。スイッチが押されないことを祈ろう)
実は、この穴をつくる(掘る)Bcl-2ファミリータンパク質によく似たタンパク質が原核生物にも存在するのだ。
(次号に続く)
(モグリュー)
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