2012年8月8日水曜日

ミトコンドリア(19)あの頃はよかった

ミトコンドリアは宿主細胞に昼夜を問わずこき使われて(休まれても困るんですが、笑)、ふと自分を振り返った時、あの頃はよかった、ときっと溜息をついていることだろう。

本来、ミトコンドリアもミトコンドリアDNAの乗り物に過ぎなかったわけだから、溜息をついているのはミトコンドリアDNAということか。

DNAの一番の望み(DNAが七夕の短冊に必ず毎年書いているであろう望み)は、自分のコピーをたくさんふえせますように、ということ。


(ハルヒより、笹の葉ラプソディ)

DNAにとっては複製できてなんぼ、である。

しかし、現在のミトコンドリアDNAは自分の好きに複製すらもできないのだ。

ミトコンドリアから核に移った遺伝子が沢山ある一方で、核にも移らずにミトコンドリアから失われてしまった遺伝子も沢山ある。その中にはDNAの材料になるdNTP(デオキシATP、デオキシCTP、デオキシTTP、デオキシGTP)の合成酵素の遺伝子もある。

なぜならば、宿主細胞がdNTPを作ってくれるから。

ヒトのビタミンC合成酵素(L-グロノラクトンオキシダーゼ)の遺伝子が失われたと同じ理由で、自分で作らなくても手に入る化合物の合成に必要な遺伝子は失われる。

しかし、今では宿主細胞はdNTPを年がら年中大量につくってくれはしない。

宿主細胞が大量にdNTPをつくるのはDNA複製を行うS期のみ。
そりゃそうだ。DNAの材料なのだから。

料理もしないのに食材を大量に買い込んできても腐らせるだけ。

ミトコンドリアが原核生物だった頃には、DNA複製はある細胞周期の一時期だけに限定されることはなかった。

現在でも細菌ではDNA合成は常に行われている。
DNA合成はとても時間がかかりそれが分裂の律速にもなっている(大腸菌で40分)
大腸菌の分裂速度は20分だからその2倍もかかっている。
そのため、DNA複製は次の次の細胞分裂を見越して、DNA複製も多重に起こっている(真核生物だったらこんなことは絶対にない!)




しかし、現在は、大家(宿主細胞)が出してくれる飯の時間に合わせてDNAをS期に合成する羽目になった。

独り身なら外でいつ飯を食おうが自分の勝手だが、結婚すればもちろん相手に合わせて生活しなくてはならなくなる。ミトコンドリアがそれを幸せと感じていればそれでよいのだけれども。


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