機能異常のミトコンドリアDNA修復酵素を導入されたマウスでは、ミトコンドリアDNAの変異が促進され、それに伴って老化が促進され、寿命が短くなった。
しかし、この実験で言えることは、病気か何かでミトコンドリアDNAに過度の変異が蓄積されると老化が促進されるということだ。
相変わらず、通常のマウスやヒトで本当に老化の主な原因がミトコンドリアDNA変異の蓄積であるかは不明である。
この手の実験での結論は慎重に行わなければならない。
分かりやすく自転車に例えよう。
自転車は通常はタイヤがすり減って交換しないとパンクして走れなくなる(とする)。
つまり自転車の寿命を決めているのはタイヤである。
しかし、もし作為的にすぐに折れるようなハンドルにしておけば、そのうちハンドルが折れて乗れなくなる。
しかしこの結果から、自転車の寿命を決めているのはハンドルだ、とは結論するのはおかしいだろう。
上記のマウスの実験は、これと同じことなのだ。
もし、自転車の寿命を決めているのがタイヤであるということを示したければ、タイヤを強化して、それで自転車の寿命が延びることを証明する必要がある。
同様に考えれば、マウスのミトコンドリアDNAの変異を何らかの手法で減らして(例えば、ミトコンドリアの活性酸素を消去するSOD遺伝子を増強するとか)、それによりマウスの老化が抑制されたら、ミトコンドリアDNA変異が老化の一要因と言える。
同様な間違った結論は、他の病気でも散見される。
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群は核膜を構成しているラミンというタンパク質が異常になって、老化が速く引き起こされる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群
しかし、この病気をもって、核膜異常がヒトの老化の主原因である、と言ったら言い過ぎだ(多分、分かっている研究者ならそう思っていない筈)。
(言い過ぎと飲み過ぎに注意しましょう)
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