勿論、体細胞に取り込まれたDNAは直接自分のコピーは残らないが、生殖細胞の中にあるのも同じクローンだから、結局のところ自分のコピーは残ることにはなる。
しかし、生殖細胞になっても子孫を残せないミトコンドリアDNAがある。
それは、男性の生殖細胞、いわゆる精子のもつDNA。
沢山の栄養分を蓄えた卵子と違って、身軽が信条の精子はほとんど細胞質をもっていない。
ミトコンドリアに関しても、ヒト卵子が10万個のミトコンドリアを有しているのに対して、ヒト精子のミトコンドリアは100個に満たない。
そして受精後には多少のミトコンドリアが卵子に入り込むだけど、それも間もなく失われる。
これにより、ミトコンドリアは母系遺伝する。Y染色体が男系遺伝するのと対照的。
女の子が持っているミトコンドリアは全てお母さんからもらったものだし、お母さんもそのお母さんからもらったもの。
人類のミトコンドリアDNAの配列を比べると、全人類のミトコンドリアDNAは一人の女性に行き着く。この女性は「ミトコンドリアイヴ」と呼ばれる。
要は卵子が欲しいのは精子の核DNAだけ。
クラミドモナスではオス由来のミトコンドリアDNAは積極的にDNA分解酵素により分解される。線虫では、オス由来のミトコンドリアのみがオートファジー(自食作用)によって積極的に分解される。
どうも卵子にとってはオスのミトコンドリアDNAは邪魔な存在のようだ。なぜか?
核ゲノム(卵子と精子のゲノムが融合して今や一つのユニットとなっている)にとっては、父由来、母由来の二種類の異なるミトコンドリアゲノムと連携してミトコンドリアを制御することがどうも不得手のようなのだ。
妻が一人に夫が二人いて、その夫が別々の要求を妻に求めてきたら、妻としてはどうふるまったらよいか分からない。
(三角関係は王道)
その結果、消されるのは卵子に新たに入ってきたオスのミトコンドリアDNA。
卵子の中には腕利きのスナイパーがいて、卵子に入り込んだミトコンドリアのゲノムは見逃さず倒す。
入ってくる数も少なく消すのも楽なので、オス由来の方が消されることになったのであろうが、どのようにしてオスメスのミトコンドリアを見分けて、オス由来のミトコンドリア(DNA)のみを攻撃するか、そのしくみはまだよく分かっていない。
(こんなヤツがいる)
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