2012年8月27日月曜日

ミトコン(32)エネルギーか熱か?

前回の続き。

ミトコンドリアはATPをつくるだけでなく、熱もつくる。

北方のイヌイット(エスキモー)の場合、より多く体温を保つ必要がある。
そのため、イヌイットは、ATPをつくらないで熱を発生させるような変異をミトコンドリアDNAにより多くもっている。

(エスキモー)


その逆に熱の発生を必要としないアフリカ人にはそのような変異は見つからなかった。

イヌイットはそのため、食べ過ぎて呼吸鎖でたくさんプロトン勾配がつくられてATPがそれ以上つくれない場合にも、プロトン勾配を熱に解消することができるため、電子伝達系が滞ることがない。そのため、活性酸素が発生しにくい。

一方、アフリカ人は食べ過ぎた場合、プロトン勾配を熱に解消することができないので、電子伝達系が滞ってしまって活性酸素が発生しやすい。そのため、アフリカ人は活性酸素による病気、心臓病や糖尿病が多い。


しかし、その反面、エネルギーよりも熱になりやすいミトコンドリアをもつことでの病気もある。

精子は100に満たないミトコンドリアしか持たない。



そのため、ミトコンドリアが少ない上にあまりエネルギーをつくってくれないと、精子が元気に泳げない「精子無気力症」になってしまう。

北欧人には精子無気力症が多いのはミトコンドリアのエネルギー効率に問題があると考えられている(イヌイットの精子無気力症のデータはない)。

ミトコンドリアはかように、生物の様々な生と性に深く関与している。
二つの生物が折り合ってできている真核生物は遺伝子の利己性を考える上でも格好の材料となっている。

長かったミトコンドリアの一席は本日でおしまい。

次回からはまた別の話題を紹介する。


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